UFO小学校のかていほうもん
むかい とよあき
東京都豊島区池袋*―**―**
向井豊昭 58歳 電話 ****・**** 無職
こどもの日がおわって十日もたつのに、こいのぼりが見えました。マンションの一ばん上、右から四つ目のベランダです。小さなぼうが二本、てすりにくくりつけられ、ひごいとまごいが一くみずつたれ下がっていました。 たれ下がっているのは、かぜがふかないためではありません。がようしでつくったこいのぼりは、おなかをふくらませるために、しんぶんがみをつめこんでいました。そのおもさのために、ふつうのかぜでは、およぐことのできないこいのぼりなのです。
およがせるには、たいふうしかありません。つくり上げた子どもたちは、こいのぼりをつけたぼうをもって、たいふうのように学校のまわりをはしったものでした。かみテープでつくったふきながしは、おかげで、みんなちぎれてしまったのです。
ベランダの一本にも、ふきながしはありません。大ちゃんのつくったものでした。もう一本は、ママのつくったこいのぼりです。かみテープのかずも、ながさも、つくったときとかわらずに、ふきながしはヒラヒラとゆれていました。たいふうのように、はしることのできなかったママなのです。
「コーイーノーボーリー!」
ベランダのこいのぼりを一ばん先に見つけたのは、ひろ子ちゃんでした。車いすにのった目のたかさは、いっしょにきただれよりもひくいのに、たかいマンションの小さなこいのぼりを見つけてしまったのです。
「アッ、ほんとだァ!」と、一ばんたかい鳥男くんがこえをつづけました。 「どこ?!」 「どこ?!」
水とうをかたにかけ、リュックサックをせおった子どもたちのこえがかさなります。こいのぼりの手すりから、かおをのぞかせたのは大ちゃんでした。 「いま、むかえにいくからネーッ!」
手をふりながら大ちゃんはさけびました。五月は、UFO小学校のかていほうもんの月なのです。学校でのべんきょうはありません。くみごとにまとまって、じぶんのくみのともだちのうちをたずねてあるくのです。
マンションの入口にみんながまわると、大ちゃんがそとにとび出してきました。車いすをおす鳥男くんの手にならんで、大ちゃんの手も力を入れます。車りんのまわりかたがはやくなりました。みんなの足のうごきも、つられてはやくなります。一びょうでもはやく、みんなをうちの中にいれたい大ちゃんなのです。
うごきがとまりました。エレベーターのドアのまえです。 「三十人ものれるかなァ」と、鳥男くんがいいました。
「じゃあ、ぼく、かいだんでつれていく」 ことばといっしょに、大ちゃんは、もはしり出していました。
「はんぶん、大ちゃんについてきなァ!」
鳥男くんがいったとたん、「ワーッ!」というさけびといっしょに、みんなもはしり出しました。のこったのは、鳥男くんと、ひろ子ちゃんだけです。二人は、かおを見あわせてわらいました。
二人をのせたエレベーターは、一ばん上の十一かいにむかっていきます。 「イーチー、ニーイー、サーンー……」
すう字のあかりにあわせて、ひろ子ちゃんがこえを出します。ひろ子ちゃんにあわせて、鳥男くんもこえを出しました。
「きゅーうー、じゅーうー、じゅーうーいーちー」 エレベーターのうごきがとまり、かわってドアがうごきました。
ひらいたドアのむこうには、大ちゃんのママのえがおがありました。パパのえがおもならんでいます。かていほうもんの日は、どこのかいしゃも休みになるのです。
「ショーコーチャーンー!」
ひろ子ちゃんは、ママの名まえをよびました。パパは目をパチクリしました。ママもUFO小学校に入学し、みんなに『小子ちゃん』とよばれていることをパパはしらなかったのです。
「岡鳥男です。きょうは、みんなでかていほうもんにうかがいました」
鳥男くんが、パパのまえであたまを下げました。あんまりりっぱなおじぎなので、パパはかいしゃにいるときの気ぶんになってしまいました。
パパの右手が名し入れをさぐろうとします。名し入れをうちポケットに入れて、パパのせびろは、ようふくダンスの中でした。パパがきているのは、せびろではなく、スポーツシャツです。
パパの右手がスポーツシャツのむねにあたりました。むねのポケットにゆびが入ります。入ったとたん、パパはポケットのちがいに気がつきました。 「森山です。あいにく、名しをきらしてしまいましたので……」
「名しなんかいらないわよ。あなたを見たら、大ちゃんのパパだってことが、すぐわかるじゃない」と、ママは、パパのおなかをつつきました。
かいだんの音がひびき、みんなが上がってきます。 「ついたァ!」 こえといっしょに、まっ先にあらわれたのは大ちゃんです。
「オーナージー!」と、ひろ子ちゃんがいいました。 「なにがおなじなの?」と、大ちゃんはかたでいきをしながらいいました。
「ダーイーチャーンートー、パーパー!」
大ちゃんのかおと、パパのかおは、たまごのかたち。ママのかおは、おまんじゅうのかたちです。耳のかたち、まゆげのかたち、はなのかたちと、大ちゃんはパパのそっくりさんでした。
「おなじィ!」 「おなじィ!」 かいだんを上がってきた子どもたちが、パパのかおをゆびさして、よろこびます。
「ぼく、パパににてるけど、ママにもにてるんだよ」と、大ちゃんは、みんなにいいました。
「くちびるのかたちは、ママそっくりだもんね」と、パパは大ちゃんのあたまをなでながらいいました。
みんなの目が、いっせいにうごきます。大ちゃんの口と、ママの口は、かわいいおちょぼ口。パパの大きな口は、はっきりいって、かわいいとはいえません。
「こっちだヨォ!」 大ちゃんの足がスキップをします。ドアを大ちゃんがあけました。
みんなを入れるために、ふすまをはずし、へやを二つつなげています。へやのむこうには、こいのぼりをくくりつけたベランダが見え、ビルのならぶけしきが見えました。
「あっ、UFO小学校だ!」 「本とうだ!」 「学校が見える!」
こえをたてて、みんながベランダにはしります。いつも見ているけしきなのに、大ちゃんもはしりました。ひろ子ちゃんの車いすも、じぶんの力ではしります。
はしらないのは、たった一人――水とうのふたをあけながら、ノソノソとベランダにむかっていく男の子がいます。
「太(ふとし)くん、水をこぼすわよ。のむなら、すわってのみなさい」
ママがこえをかけました。『大』と『太』はにているけど、大ちがいの二人です。太くんはよこにのび、大ちゃんはたてにのびていました。たてのながさだけくらべるなら、一年生の大ちゃんは、五年生の太くんにまけません。
ママのこえは、太くんにはきこえませんでした。水ものみたければ、けしきも見たい太くんです。太くんのしんけいは、水とうとベランダにとられ、耳のしんけいは空っぽです。 UFO小学校のまっ白いドームが、お日さまのひかりをはねかえしていました。ポタッと一つ。大ちゃんのくびすじに雨つぶがおちます。
アレッ?
空を見上げる大ちゃんの目には、くも一つない青空がうつります。うしろにくびをまわすと、水とうのふたで水をのんでいる太くんがいました。
大ちゃんは、くびすじを手でふきながら、からだをよこにうつしました。太くんのからだがまえに出ます。太くんのまえには、ひろ子ちゃんがいました。 車いすにのったひろ子ちゃんのあたまはひくく、太くんの目のまえのけしきは、きゅうにひらけました。
「ワーッ、UFO小学校だァ!」 みんなにおくれた大きなこえで太くんがさけんだとき、ひろ子ちゃんもさけびました。
「アーメー!」
こんどの雨は大雨です。けしきに見とれながら、太くんは、二はい目の水をふたにそそいでいたのです。ふたからそれて、水は水とうの口からドクドクと、ひろ子ちゃんのあたまにかかってしまったのです。
「ワーッ、やっぱりやっちゃったァ!」 ママは、たんすのまえにはしりました。大ちゃんの下ぎとTシャツをつかみます。
「ひろ子ちゃん、きがえるわよ」 「アーメー!」
ベランダのひろ子ちゃんは、空をあおいでないています。あたまのそばに、むき出しになった太くんのおなかがありました。ひっぱり上げたシャツのすそで、太くんはひろ子ちゃんのあたまをふこうとしているのです。
「パパ! タオル! タオル!」
ママのこえが、パパをはしらせます。せんめんじょから出てきたパパは、タオルをポーンとなげました。タオルはへやをとび、ひろ子ちゃんのあたまにかぶさりました。
「シュートー!」と、ママがいいました。みんなは、おなかをかかえてわらいます。
ママもわらいながら、ひろ子ちゃんのあたまをふきました。タオルをとると、ひろ子ちゃんもわらっています。
きがえもおわり、みんなは、へやの中でまるくなりました。水とうをはずし、リュックサックをおろします。
おやつのとりかえっこがはじまりました。あちらでも、こちらでも、水とうの口から水が音を出します。
「ママ、ぼくにも、リュックサックと水とうのちょうだい」
ママのくれたおさらのおやつと、コップの水には手をつけず、大ちゃんは、ママの耳もとでささやきました。
ママが立つと、パパも立ちました。先にもどってきたのはパパです。パパは、ダンボールをかかえていました。
「わたしのかいしゃでつくったものを、みなさんにさし上げましょう」
パパは、ダンボールをひらきました。小さなはこのかたちをしたものが、きれいなかみにつつまれて、たくさん入っています。
パパは、つつみを一つ手にとりました。 「このはこの中には、たまごが入ってるんですよ」
「ぼく、アレルギーで、たまごたべられないんです」と、太くんがつまらなそうにいいました。
「たべるたまごじゃありません。このたまごはね、タマゲタマゴっていうんです。こころの中でおねがいをして、おでこの上でポンとわると、おねがいをしたものなら、なんでも出てくるんですよ。ただし、一かいかぎりです。われたら、もうおしまいです。みんな、おうちにかえってから、おねがいごとをよくかんがえてタマゲタマゴをわってくださいね」
一つずつ、パパがくばってあるきます。おそるおそる、みんなは手を出しました。ふしぎなはなしに、こえはでません。かみをやぶり、はこをひらいてみたいけど、もったいなくてできません
ピーンポーン! チャイムが大きくひびきました。タマゲタマゴをまもるように、おもわずつつみをだきしめるみんなです。
水とうとリュックサックを大ちゃんにわたし、ママは、ドアにむかいました。 「こんにちわ!」
ひらいたドアのそとからこえをかけたのは、ママとおなじ一くみのうた子さんです。うた子さんのうしろには、一くみのみんなのかおがみえました。
「あら、まあ、きょうはなあに?」と、ママはおどろいていいました。 「いやねえ、きょうは、かていほうもん日じゃないの」
「そうよ、大ちゃんのかていほうもん日で、六くみのみなさんがきているわ」 「あら、六くみもきているの?」 「そうよ」
「でも、わたし、きのう小子ちゃんに、ねんをおしましたよね」 「なにを?」
「あしたは、小子ちゃんのおうちのかていほうもんねって」 「そうだったわねえ」
「大ちゃんのおうちっていったんじゃないのよ。小子ちゃんのおうちっていったのよ」 「そうだったわねえ」
「小子ちゃんは、ただのママじゃなく、UFO小学校の一くみのせいとなのよ」 ママは、パンとてのひらをうちました。
「うた子さんのいうとおりだわ! わたし、かんちがいしていた! ごめんなさい!」
二人のこえは、へやの中につつぬけです。わけのわからないのは、パパだけでした。
「どういうことなんだ?」と、パパは小さなこえで大ちゃんにたずねました。一口では、とてもせつめいできません。
「しらないよ」と、大ちゃんは、まゆをしかめていいました。 「おじゃましマース!」 「おじゃましマース!」
うた子さんを先とうにして、二十九人が入ってきます。いったい、ぜんぶで、なん人になるのでしょう? さんすうのもんだいをつくって、こたえを出してみましょうか?
大ちゃんのうちは、パパとママの3人かぞくです。3人でまっていたら、UFO小学校の1くみと6くみ、どちらも29人のともだちがたずねてきました。大ちゃんのうちには、ぜんぶでなん人の人が入ったことになるのでしょう。
3+29+29=61 こたえ 61人
二へやに、六十一人です。これではもう、すわることができません。先にきていた六くみの子どもたちは、ばしょを空けるために立ちはじめました。
「ワーッ、大ちゃんのソックリさんみたい!」 パパのかおを見るなり、うた子さんは、手をたたいていいました。 「ほんとだァ!」
「大ちゃんのソックリさん!」 一くみのみんなは、六くみのみんなとおなじようによろこびました。
「ちょっと、ちょっと、大ちゃんのソックリさんじゃなく、大ちゃんがソックリさんなんじゃない?」と、鳥男くんが口をはさみました。
「小子ちゃんは、だれのソックリさん?」と、ママにむかってたずねたのは、入ってきたばかりの流ちゃんです。
「わたしはね、わたしのパパのソックリさんよ」と、ママがこたえました。 「エッ? 小子ちゃんにもパパがいるの?」
「いますヨー」 「どこにいるんですか?」と、うた子さんがたずねました。 「ホッカイドウにいるのよ」
「いきたいなァ」と、流ちゃんがいいました。 「いきたいなァ」 「いきたいなァ」 こえがひろがります。
「一くみのかていほうもんは、ここにこないで、ホッカイドウにいけばよかったのヨネー」と、うた子さんがいいました。
「一くみだけなんて、ずるいよ」と、鳥男くんです。 「ずるくないわよ。六くみは、大ちゃんのパパにあうために、ここにきたんでしょう?
だったら、一くみの小子ちゃんのパパにあうために、一くみはホッカイドウにいかなくちゃならないわ」
うた子さんがいいかえすと、ママがあいだに入りました。
「ねえ、ねえ、六くみだとか、一くみだとかいってないで、なつ休みのキャンプは、学校中のみんなでホッカイドウにいきましょうよ。わたしのパパもママも、きっと、よろこんでむかえてくれるわ」
「いこう!」 「いこう!」 「いこう!」
パチパチパチと、はく手をつけてさわぐのは、一くみの子どもたちです。六くみの子どもたちの口はうごきますが、手はうごきません。タマゲタマゴのつつみを手にもっているからなのです。
「大ちゃん、それ、なあに?!」
ベランダにはみ出た流ちゃんが、へやの中の大ちゃんにこえをかけました。大ちゃんも、つつみを一つ、もらっていたのです。
「これねえ、パパのかいしゃでつくったタマゲタマゴなんだよ!」 「ほしいなァ!」
どういうものかもわからないのに、流ちゃんは、さっそくほしがります。
「ごめんね、ここにはもないんだけど、しゃちょうにはなして、学校にとどけるからね」と、パパがいいました。
「一くみのぶんだけじゃ、だめよ。二くみと、三くみと、四くみと、五くみのぶんも、とどけてよ」と、ママがいいます。
「じゃあ、あといくつ?」 パパがたずねました。 「三十人ずつのくみなのよ」と、ママがこたえます。
パパは、あんざんをしました。パパのあたまの中には、どんなしきがあったのでしょう? 30×5−1=149
「百四十九こだな」 あんざんをおわったパパのことばです。 「かずが、はんぱよ」と、ママがいいました。「一をひいたんだ」
「どうしてひくの?」 「ママのぶんは、いらないだろう? 「わたしだって、ほしいわよ」と、ママは口をとがらせました。
「わかったよ。百五十こ、とどけるよ」 そのとき、大ちゃんのこえが、子どもべやからひびいてきました。
「あったァ! あったヨォ!」
こえといっしょに、大ちゃんがとび出してきます。左手にあるのは、タマゲタマゴの手ばなせないつつみです。そして、右手には、もう一つのつつみがありました。左手のきれいなつつみがみにくらべて、右手のつつみは、きいろくなったしんぶんがみです。
「ママ、ちょっともってて」 きれいなつつみをママにわたし、大ちゃんは、しんぶんがみのつつみをあけました。
小さなダンボールのはこが出てきます。ゆっくりとふたをあけ、ゆっくりとのぞきこむ大ちゃんのくびのうごきといっしょに、みんなのくびものびていきます。
大ちゃんのゆびが、はこの中に入りました。たからものをつまんだゆびが、はこの中から上がってきます。ゆびの先には、ザラザラした、ちゃいろの石がありました。
「これねえ、ホッカイドウの石なんだよ。きょ年、パパやママと、ホッカイドウで一ばんたかい山にのぼったの。山のてっぺんからひろってきたんだァ。ねえ、みんな、山の名まえ、しってる?」
「……」
こたえるものは、だれもいません。大ちゃんは、かなしくなってきました。ホッカイドウは、この三月まですんでいた大ちゃんのふるさとなのです。大じな大じなふるさとも、ここでは、よそのくになのでしょうか?
「こうさん、こうさん」 太くんのあかるいこえがしました。りょう手を上げて、太くんはいいました。
「ねえ、大ちゃん、その山の名まえ、おしえてよ」 大ちゃんは、ニコッとわらっていいました。「おしえようかなァ、おしえないかなァ」
「おしえてヨーッ!」と、みんなのこえがひびきます。 「シーッ!」
大ちゃんは、くちびるにゆびをあてました。みんなのこえがしずまります。 「ホ、ロ、シ、リ」
「かっこいい名まえ!」と、太くんがいいました。
ホロシリの石は、手から手にわたっていきます。ベランダにはみ出た流ちゃんの手にもわたりました。
上からながめ、よこからながめ、ついでににおいもかぎました。ざんねんながら、においはしません。
ゆびでつまんで、となりの人にわたそうとしたとき、流ちゃんは、手すりにひじをぶつけてしまいました。
いたみがはしり、ゆびの先がゆるみます。たからものは、いきおいをつけて、手すりのそとへととんでいきました。 「アーッ!」
こえといっしょに、流ちゃんは下を見ました。花ざかりのすぎたツツジが生え、はっぱが、めいろのようにしげっています。
流ちゃんのからだが、へやの中をはしりぬけました。くつをつっかけ、ろう下にとび出します。
あとをおって、みんなもそとにとび出しました。ひろ子ちゃんの車いすもはしります。 61×2=122
なんのかずだか、わかりますか? たからものをさがす目玉のかずです。そんなにたくさんの目玉をつかっても、見つけることができません。
「オイ、大――タマゲタマゴで出してもらえよ」と、パパがいいました。
大ちゃんは、タマゲタマゴのつつみをりょう手でだきかかえ、あとずさりをしました。六くみの子どもたちは、みんなタマゲタマゴをもったまま、下におりてきたのです。
「ごめんね、大ちゃん」と、流ちゃんは、うなだれていいました。一くみの流ちゃんは、タマゲタマゴをもらっていません。
かみのやぶれる音がしました。はこをひらく音がしました。太くんの手の中に、タマゲタマゴがすがたをあらわしています。UFO小学校をちぢめたように、それは、まっ白いドームのかたちをしていました。
太くんの手が、おでこにむかってうごきます。 コン――
おでこにぶつかり、タマゲタマゴは、まっ二つにわれました。中からとび出してくるのは、大ちゃんのたからもの――ホッカイドウ一の山、ホロシリの石です。
タマゲタマゴのからをすて、太くんの手がたからものをうけとめました。おでこには、赤いあとがのこり、あせがつたわっています。「のど、かわいたァ!」と太くんはいいました。
〈了〉
続き
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