北の想像力 SF乱学講座「忘れられた作家・鶴田知也を読む〜北海道・開拓・アイヌ〜」

北の想像力

配布資料
鶴田作『家庭の幸福』の戦前版と戦後版の検閲比較

その一
戦前1

戦後1
台詞後半部分に注目。戦争、出征を勇敢として称揚する部分の削除。

その二
戦前2

戦後2
日露戦争の名誉の負傷者→日露戦争のおりの負傷者
国家の恩人→国家の犠牲者

その三
戦前3

戦後3
南京渡洋爆撃称揚の削除。

検閲はおおむね、戦争の称揚、戦死者の顕彰に向けられていることがわかる。

戦前の検閲は×マークでの伏字による検閲があったけれど、戦後アメリカによる検閲では、文言の変更、同字数での文章の書き換え、といった形で、検閲とはわからないような検閲が行われていた。紙型、という一度作った型を用いて再版をしようとしたので、このように同字数での書き換え、が前提になっている。修正箇所が多すぎる場合は再版を断念することもあった。

なお、戦後すぐに再版された『若き日』では、大きな空白が残るただの削除箇所があり、必ずしも『家庭の幸福』のような検閲がなされたわけではないようだ。

戻る

《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅