北の想像力 ブックガイドリスト+

北の想像力

執筆者による、五百字程度のブックレビューで扱われた作品の一覧です。書籍と同じく、著者名順に並んでいます。

作者名【あ行】
ほか♨いど(青沼静哉)
エリ・エリ・レマ・サバクタニ(青山真治)
肝盗村鬼譚(朝松健)
魔犬召喚(朝松健)
忌の血族(朝松健)
旋風伝 レラ=シウ(朝松健)
中空知防衛軍(あさりよしとお)
榎本武揚(安部公房)
スフィンクスは笑う(安部ヨリミ)
光を背負う男(荒木巍)
空白の十字架(荒巻義雄)
アッツの幽霊(荒巻義雄)
白き日旅立てば不死(荒巻義雄)
時の葦舟(荒巻義雄)
カインの末裔(有島武郎)
折れた魔剣(ポール・アンダーソン)
生存者ゼロ(安生正)
静かな大地(池澤夏樹)
冬至草(石黒達昌)
平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士並びに(石黒達昌)
人喰い病(石黒達昌)
望郷と海(石原吉郎)
街と村(伊藤整)
鳴海仙吉(伊藤整)
プロメテウスの涙(乾ルカ)
四千万歩の男(井上ひさし)
北へ深夜特急(井上雅彦)
セデック・バレ(ウェイ・ダーション)
原始林の野獣と共に(上田廣)
コシャマインの末裔(上西晴治)
先住民族の「近代史」(上村英明)
センコロール(宇木敦哉)
榎本武揚 シベリア日記(榎本武揚)
四角い円(円城塔)
愉快な鐵工場(大城のぼる)
小笠原克 北方文芸編集長の仕事(小笠原克)
《日本》へ架ける橋(小笠原克)
小熊秀雄詩集(小熊秀雄)
詩人 逸見直吉(尾崎寿一郎)

作者名【か】
ロビンソンの末裔(開高健)
氷(アンナ・カヴァン)
ガメラ2 レギオン襲来(金子修介)
弧状の島々――ソクーロフとネフスキー(金子遊)
日本植民地児童文学史稿(上笙一郎)
評伝 鷲巣繁男(神谷光信)
〈緑人社〉の青春――早川三代治宛ての木田金次郎・高田紅果書簡で綴る大正期芸術運動の軌跡(亀井志乃)
感性の変革(亀井秀雄)
アイヌの民具(萱野茂)
日本近代文学の起源(柄谷行人)
北夷風人(河崎秋子)
武田泰淳伝(川西政明)
夢意識の時代 SF論集(川又千秋)
異郷の昭和文学 「満州」と近代日本(川村湊)
「記憶の場」のエージェント――「アイヌ研究住職」と人文神オキクルミの〈昭和史〉(木名瀬高嗣)
アカシヤの大連(清岡卓行)
赤蝦夷風説考(工藤平助)
ニングル(倉本聰)
初音ミク(クリプトン・フューチャー・メディア)
姉妹(畔柳二美)
「ひかりごけ」事件 難破船長食人犯罪の真相(合田一道)
夢幻界 オンディーヌ(児島冬樹)
北極シティーの反乱(小隅黎)
大地の冬のなかまたち(後藤竜二)
ソーダ村のソーダさん。(湖西晶)
蟹工船(小林多喜二)

作者名【さ】
地下大陸(さいとう・たかを)
柳瀬尚紀訳『フィネガンズ・ウェイクT〜W』のアイヌ語地名について(齋藤一)
白い殺戮者(佐々木譲)
動物のお医者さん(佐々木倫子)
幻視する〈アイヌ〉(佐々木昌雄)
だれも知らない小さな国(佐藤さとる)
デンデラ(佐藤友哉)
海炭市叙景(佐藤泰志)
文化を翻訳する 知里真志保のアイヌ神謡訳における創造(佐藤=ロスベアグ・ナナ)
一者の賦(澤井繁男)
天使の狂詩曲(澤井繁男)
まつろはぬもの――松岡洋右の密偵となったあるアイヌの半生(シクルシイ)
ぐずべり(清水博子)
海と陸と〈世界史的一考察〉(カール・シュミット)
空の向こう、約束の場所(新海誠)
発明皇帝の遺産(新戸雅章)
競馬の終わり(杉山俊彦)
となりに脱走兵がいた時代――ジャテック、ある市民運動の記録(関谷滋・坂元良江)
コンタクト(ロバート・ゼメキス)

作者名【た】
根釧開拓と移住研究(鷹田和喜三)
観音力疾走(高橋揆一郎)
太陽の王子 ホルスの大冒険(高畑勲)
ネガティヴハッピー・チェーンソーエッヂ(滝本竜彦)
ひかりごけ(武田泰淳)
ひとり百物語 怪談実話集(立原透耶)
ゲンダーヌ ある北方少数民族のドラマ(田中了、D・ゲンダーヌ)
アイヌ語入門――とくに地名研究者のために(知里真志保)
アイヌ神謡集(知里幸恵)
密室キングダム(柄刀一)
土方歳三、参る!――幻説五稜郭(辻真先)
歌と饒舌の戦記(筒井康隆)
村の創業(都築省三)
日本ふるさと沈没(鶴田謙二・吾妻ひでお・唐沢なをき・あさりよしとお他)
コシャマイン記・ベロニカ物語(鶴田知也)
鶴田知也作品集(鶴田知也)
シュマリ(手塚治虫)
Hokkaido Greem(エイダン・ドイル)
北方の夢(豊田有恒)
北洋の開拓者(豊田穣)

作者名【な】
虚無への供物(中井英夫)
アイヌの物語世界(中川裕)
岩波講座 日本文学史 第17巻 口承文学2・アイヌ文学(中川裕ほか)
太陽叩き(中沢茂)
榎本武揚 シベリヤ外伝(中薗英助)
ブリューゲルへの旅(中野孝次)
海燕(中野美代子)
ゼノンの時計(中野美代子)
北方論 北緯四十度圏の思想(中野美代子)
幻の北海道共和国(夏堀正元)
マリモ国道241(夏堀正元)
その夢の続き――波津尚子短編小説集(波津尚子)
大風呂敷と蜘蛛の糸(野尻抱介)

作者名【は】
完訳 日本奥地紀行3 北海道・アイヌの世界(イザベラ・バード)
北の時代(秦恒平)
コタンに死す――鳩沢佐美夫小説集(鳩沢佐美夫)
風の吹きわける道を歩いて――現代社会運動私史(花崎皋平)
宙音(林美脉子)
記憶汚染(林譲治)
進化の設計者(林譲治)
大東亜の矛(林譲治)
満月(原田康子)
昭和詩の発生(樋口覚)
地底獣国(久生十蘭)
魔の国アンヌピウカ(久間十義)
流浪の手記(深沢七郎)
アイヌ――神々と生きる人々(藤村久和)
蝦夷地別件(船戸与一)
石狩平野(船山馨)
ヤマタイカ(星野之宣)
北海道連鎖殺人――オホーツクに消ゆ(堀井雄二)
牧逸馬の世界怪奇実話(牧逸馬)
北海道化石としての時刻表(征谷洋平)
砲撃のあとで(三木卓)

作者名【ま】
喪われた都市の記録(光瀬龍)
風の又三郎(宮澤賢治)
風に乗って来るコロポックル(宮本百合子)
人間同志に候えば(三好文夫)
怪道をゆく(向井豊昭)
北海道文学を掘る(向井豊昭)
羊をめぐる冒険(村上春樹)
希望の国のエクソダス(村上龍)
辺境から眺める アイヌが経験する近代(テッサ・モーリス=鈴木)
北方空間の思想(森巖)
定信公始末(森真沙子)

作者名【や】
王道の狗(安彦良和)
虹色のトロツキー(安彦良和)
カムイの剣(矢野徹)
妖精王(山岸凉子)
増補版エキノコックス――その正体と対策(山下次郎、神谷正男)
アンモナイトのささやきを聞いた(山田勇男)
物体X(山田正紀)
天動説(一)江戸幻想編、天動説(二)蝦夷伝奇編(山田正紀)
影の艦隊(山田正紀)
自我系の暗黒めぐる銀河の魚(山田ミネコ)
陰態の家(夢枕獏)
吉田一穂詩集(吉田一穂)
羆嵐(吉村昭)
脱ニッポン記――反照する精神のトポス(米田綱路)

作者名【ら】
サハリンへの旅(李恢成)

作者名【わ】
なぜ、北海道はミステリー作家の宝庫なのか?(鷲田小彌太・井上美香)
風土のなかの文学(和田謹吾)

 

(ここでしか読めない)ボーナストラック
「魚」
作者:川又千秋
初版:「NW−SF」6号 NW−SF社 一九七二
最新版:『最後の新人類』所収 中央公論社 一九八六
担当:岡和田晃
 一九七二年、川又千秋(一九四八〜)は二本の短篇を発表した。それがデビュー作の「舌」(「NW−SF」5号)と、本作「魚」である。この二作は、散文詩的なスタイルとSFならではのスペキュレーションが融合しており、作家・川又千秋の最高峰を示している。「魚」は、語り手と、「わたしの大学の先輩にあたり、アイヌの民俗を専門に研究している郷土史家」の「先生」が、調査のために「Y水産試験場」を訪れるという、著者言うところの私小説だ。お目当の博物館は、「Y水産試験場」から「Mというアイヌの城郭跡」へ移転してしまっていた。試験場内をぶらついた語り手は、三階にある陳列室で、ホルマリン漬けにされた標本を見る。「この部屋に累々と蓄積された、無数の脱色した死」を想い、実存的な不安を抱いた語り手は、鯨の胎児が「にっと笑った」のを感じ、背後に音程の狂った「先生」の鼻歌を聴く。「先生」は、かつて精神の均衡を失い、長期間、療養を続けていたというのだ……。陳列室という閉鎖的空間において、狂気と紙一重の切迫した状況を描出しながら、本作は「種」の劫初を思わせる胎児と「魚」のヴィジョンを結びつける。作者の故郷である小樽の近郊を舞台にした、知られざる佳作である。

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《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅